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政治記者Xの備忘録

官邸、自民党、財務省などの記者クラブを経験。マスコミで書けないネタを書いていきます。

アベノミクス補助金の呆れた実態

政治記者Xです。
真実は報道されないことのなかにある。

 

さて、創業補助金の采配一切を電通が受注しているという、そのお粗末な構図は前回書いた通り。さらにその運営実態も、取材すると驚くほどお粗末なものだった。

 

ある創業補助金受給者は、言う。

 

補助金事務局の説明が、二転三転します。しかも、自分たちの非を絶対認めない」

 

担当者によって、同じ事項に関して指示される内容が正反対のことも珍しいことではないという。

 

創業補助金のサイトには「問い合わせは電話でお願いします」と明記されている。メールで問い合わせてはいけないのだ。多くの企業がコスト削減のため、電話問い合わせを避けようとするのは常識のはずなのだが。前出の創業補助金受給者は呆れ顔でこぼす。

 

「メールでやり取りをすれば、文面で証拠が残ってしまう。説明に齟齬があったときの証拠を残したくないのでしょう」

 

問い合わせへの返答を担当者から「折り返し連絡する」と言われ、梨の礫であることも珍しくないという。

 

運用を受託している電通の姿勢に、補助金受給者は怒りを露わにする。

 

「巨額の運用費を受けているにもかかわらず、儲け主義で受給者の事情に全く配慮しない。補助金の采配を握っているので、受給者を舐めきっている」

 

例えば、補助金の説明会で参加者への机は用意されなかったという。参加者は、膝に置いたカバンの上に、説明会資料を置いて、不自由な姿勢でメモを取らざるを得ない。

 

その説明会資料も参加者が創業補助金サイトから自分でダウンロードし、プリントアウトして持ち込まなくてはならない。補助金事務局から送られてくる手続き書類は、受給者の着払い。10億円とみられる事務委託料を受けている電通だが、自社の利益を守るためには見事な「節約」ぶりではないか。

 

ちなみに「ものづくり補助金」など、国の所管する他の補助金では、このようなことはない。このような「節約」は、電通が受託している創業補助金のみだ。

 

補助金支出の基準も首を傾げたくなるものが多い。補助金なので、受給者が自由に使えるというわけではない。電通が運営する補助金事務局が認めた使途しか許されないのだ。その使途基準が矛盾だらけなのだ。

 

最も分かりやすい例は、IT関連の支出に異様に厳しいということだろう。パソコン、デジカメ、サーバーの購入はすべて許されない。動かせる機材なので、補助金対象事業以外に使うこともできるというのが、理由だ。だが、飲食店やオフィスで用いる食器や机、テーブル、テレビは使途として許されている。

 

「高齢者向けのパソコン教室で採択された受給者は、補助金の使い道がないと事務局から通告された途方に暮れていました」(前出の補助金受給者)

 

ITの積極的な活用は、安倍政権の掲げる「成長戦略」でも訴えられているはずなのだが。

 

対象的に広告費の使い方には、かなり柔軟だ。別の補助金受給者は打ち明ける。

 

補助金の使途予定を事前に電通が受託している事務局に提出しなくてはならないのですが、担当者から広告費を増やすよう『指導』を受けました。電通のような大企業に創業したばかりの中小企業が発注することはないのですが、補助金をつかって、自分たちの業界を盛り上げようとしているのかと疑ってしまいます」

 

ここまで硬直的な運用は、実は国の創業補助金くらいだ。東京都の創業補助金は、全く異なっている。

 

「東京都の補助金は都の職員が直接受給者と打ち合わせて、使途を確定させます。ですので、実態に即して判断できるので、パソコンも事業に必要なものであれば、当然認めています」(東京都の創業補助金担当者)

 

使途の判断を電通に丸投げし、硬直的な運用をしているのは国の創業補助金くらいなのだ。

 

さて、問題だらけの創業補助金の運用だが、受給者は苦情を訴える先がない。所管の経産省中小企業庁は一切関与しないという姿勢だからだ。電通の運営する事務局に異議を申し立てたくても、何か言えば支給を止められるかもしれない。創業希望者は、泣き寝入りするしかないというのが実情なのだ。

 

創業希望者を助けるため、50億円もの税金を投じられた補助金が、こんなに杜撰な運用をされているかと思うと、現在の消費税増税や軽減税率など負担増をめぐる議論が、ますます腹立たしくなるのだった。